3Dアクアテラリウム

立体写真による探訪記と恐竜ジオラマのアクアテラリウムと駄文のブログ

 

箱根探訪記(芦ノ湖編)

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葛飾北斎 「相州箱根湖水」(富嶽三十六景)
葛飾北斎 「相州箱根湖水」(富嶽三十六景)

数年ぶりの夫婦での箱根旅行の二日目、仙石原を少し早めに出発し、箱根フリーパスを利用できる箱根登山バスで箱根海賊船に乗る為、桃源台に向かった。箱根海賊船も箱根フリーパスを利用できる。本当に便利な周遊サービスだ。バスの中でそう思っている矢先に不思議な光景に出くわした。

バスが停留所に止まるたび、運転手に対して「○○まで行きますか?」と質問する人がいるのだが、予想外に運転手は質問の過半数に対して「行きません。」と答えていた。そのうちに昨日箱根湯本でのバス待ちのときに我々夫婦の後ろに並んでいた家族が、ある停留所に止まった際に運転手に対して「箱根園には行きますか?」と問い合わせに対して「この地域から箱根園に行くのは小田急バスのみです。」と答えたのだ。

夏休みで混雑し、且つやたら問い合わせを浴びることもあり、運転手はやや不機嫌そうに答えていたが、私自身は事前に確認しておいたのでバスが直接箱根園に行かないことは知ってはいたものの、赤ちゃんを抱えた家族にとっては桃源台に到達してから、箱根園に行く手段もあっただろうにもう少し判るように説明できないだろうかと多少違和感を抱いてしまったのである。

それにしても事前に確認していた時点で芦ノ湖は他に類のない不思議な観光地だと思っていた。芦ノ湖周囲の観光スポットへの交通手段が効率的に繋がっておらず、どうしても途切れてしまうのである。便利と云われる箱根フリーパスもすべてを網羅できておらず、系列でのサービス範囲が複雑で、事前に調べていないと現地では質問だらけになってしまうほど、判りにくいものなのである。

さてバスは桃源台港に着き、ここから箱根町港まで箱根海賊船で芦ノ湖を渡るのである。船を待つ人は次第に増えていき、待合スペースは飽和状態になった。さすがに関東屈指の観光地だけに外国人も多い。アジア諸国からの団体旅行も大勢いた。

(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号①(交差法)
(平行法)
箱根海賊船ビクトリー号①(平行法)

(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号②(交差法)
(平行法)
箱根海賊船ビクトリー号②(平行法)

箱根海賊船への乗船は初めてだが、溢れかえる人数の乗客で難民を運ぶような船を想像していたら少し幻滅してしまうので、一人400円を支払ってゆったりとした特別席に座ることにした。乗船する船名は『ビクトリー』。1805年トラファルガー海戦で英国艦隊がナポレオンのフランス艦隊を撃破した時、ネルソン提督が座乗していた旗艦としてイギリス国民のシンボル的な帆船『HMS Victory』をモデルにしており、船体の色や内装、船首像等は当時の雰囲気を再現しているデザインの船である。まもなくビクトリーは桃源台港を出航した。

(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号③(交差法)
(平行法)
箱根海賊船ビクトリー号③(平行法)

(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号④(交差法)
(平行法)
箱根海賊船ビクトリー号④(平行法)

湖なのに海賊船という設定とヨーロッパの帆船をモチーフにしたデザイン等、多少オーバーな気もするのだが、実際に乗船してみて、艦船好きは本格的なデザインを堪能でき、子供は海賊船と云う設定に思わずワクワクする。そして何より、琵琶湖の周遊船『ミシガン』などと違って、桃源台から箱根町・元箱根までの有効な交通手段として有効利用されていることが多くの集客を齎す要因になっていると感じた。

乗船客は多かったものの少し早めに並んだおかげで特別席も略正面に近い席に座ることが出来た。残念ながら芦ノ湖全域が霧に覆われた為に富士山の姿を拝むことは出来なかったが、逆にこの霧が海賊船に相応しい幻想的な雰囲気を醸し出していた。

【箱根町港に着いたビクトリア号】
(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号⑤(交差法)
(平行法)
箱根海賊船ビクトリー号⑤(平行法)

【箱根関所跡港の芦ノ湖遊覧船と元箱根港に向かうビクトリア号】
(交差法)
芦ノ湖遊覧船(交差法)
(平行法)
芦ノ湖遊覧船(平行法)

【箱根神社の鳥居前を通過する箱根海賊船パーサ号】
(交差法)
箱根海賊船パーサ号(交差法)
(平行法)
箱根海賊船パーサ号(平行法)

箱根町港に着き、事前に調べておいたセイロ膳の店に営業開始時間の11:30に到着。最近、芦ノ湖を取材する番組で多く取り上げられ、芸能人も多く来訪している店だけにオーダーして7~8分程で店内は溢れる程、客でいっぱいになった。この旅行における終始タイミングの良さには、少し早めに活動することの重要性を痛感した。ゆっくり焦らない旅行も良いが、行列に並んだりして待ち時間が多いとその分観光時間も削られてしまうのも時間が勿体無い。

箱根フリーパスvs箱根旅助け
芦ノ湖における交通手段と周遊サービスの比較

芦ノ湖における湖上交通手段として他には西武グループの芦ノ湖遊覧船がある。この遊覧船は、冒頭の話にもあった西武グループが経営する箱根園に桟橋を保有しており、箱根海賊船に対抗している。又、箱根一帯のバス路線も小田急系の箱根登山バスが箱根フリーパスにて箱根海賊船も利用できることに対して、西武系の伊豆箱根バスは箱根旅助けという周遊券にて芦ノ湖遊覧船を利用できることでこれに対抗している。前述通り、各々が対抗するのは良いが、事情の判らない来訪者にとっては、外国人も多数訪れる観光地でありながら、このような厄介で判りにくい交通環境であることは、大変残念である。

今回はパワースポットとしての箱根神社、九頭龍神社本宮を訪れたく、事前に検討した挙句に大変興味深い交通手段が浮上してきたのである。その手段とは『箱根パーク&サイクル』である。

箱根パーク&サイクル
『箱根パーク&サイクル』の電動アシスト付自転車

『箱根パーク&サイクル』は電動アシスト付自転車のレンタルサービスシステムである。自転車は産業技術短期大学校の生徒とパナソニック自転車とのコラボで考案されたデザインを採用し、サイクリング推奨コースの一部にある砂利道でもパンクしにくいタイヤになっているとのこと。又、周遊中にバッテリー切れとならないように、通常の2倍の容量としている反面、軽量かつ高強度のフレームを採用するなどの工夫も凝らしているとのことだ。料金は1時間:500円、3時間:1200円。16:00迄に貸出場所に戻すことが原則。

箱根地区にて数箇所の貸出場所を設けており、今回の目的と貸出場所を鑑みて『神奈川県立恩賜箱根公園』から九頭龍神社本宮~箱根神社という片道6km、往復12kmの道程を周ることを予め予定してこの日の芦ノ湖訪問に臨んだ。

芦ノ湖パワースポットサイクリングコース
芦ノ湖空撮(左)と芦ノ湖パワースポットサイクリングコース(右)

初めての電動アシスト自転車だが、係員の方から、操作方法や注意すべき地域などの少し丁寧すぎるぐらいの説明を受け、13:00少し前に斯くして”芦ノ湖パワースポットサイクリング”はスタートした。

走行して気が付いたが、芦ノ湖周辺は仙石原の道路と同様に歩道やそれに値するスペースが殆どなく、二車線の道路を殆ど途切れることなく、車やバスがピュンピュン走行する道路なのだ。ある意味、自動車が最優先で道路設定されており、東京都内とは比較にならないほど、自転車にとっては危険な道路なのである。電動アシストは本当に始動がスムーズで坂道も相当楽なのだが、反面、想像以上に始動スピードがある為、充分な注意が必要である。

【九頭龍神社本宮】
(交差法)
九頭龍神社本宮①(交差法)
(平行法)
九頭龍神社本宮①(平行法)

(交差法)
九頭龍神社本宮②(交差法)
(平行法)
九頭龍神社本宮②(平行法)

【白龍神社】
(交差法)
白龍神社(交差法)
(平行法)
白龍神社(平行法)

【箱根神社】
(交差法)
箱根神社①(交差法)
(平行法)
箱根神社①(平行法)

(交差法)
箱根神社②(交差法)
(平行法)
箱根神社②(平行法)

(交差法)
箱根神社③(交差法)
(平行法)
箱根神社③(平行法)

(交差法)
箱根神社④(交差法)
(平行法)
箱根神社④(平行法)

【湖畔からの箱根海賊船ビクトリア号】
(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号⑥(交差法)
箱根海賊船ビクトリー号⑥(平行法)

汗だくになりながらも目的のパワースポットである九頭龍神社~箱根神社への訪問は無事に達成できた。しかし想像以上にハードであったため、果たしてパワーチャージ出来たかどうかは疑問が残る。15:00過ぎに貸出場所の恩賜箱根公園に到着したときは、心地良さと同時に昨夜の仙石高原ススキの原訪問に続く連日の体力消耗に自らの疲労困憊を痛感した。

【箱根関所跡への湖畔の石畳道】
(交差法)
芦ノ湖畔道(交差法)
(平行法)
芦ノ湖畔道(平行法)

【箱根関所跡】
(交差法)
箱根関所(交差法)
(平行法)
箱根関所(平行法)

疲れ切った体に鞭打って箱根町のバス乗り場まで歩いた。ちょうど良いタイミングで箱根湯本まで直通の臨時急行便の箱根登山バスがあり、箱根湯本から来たときと同様に小田急ロマンスカーで東京に着いた。新宿から自宅の最寄りの駅までも殆どドンピシャのタイミングで乗ることが出来たので、おそらくこの上ない最短時間で19:40に自宅に着くことができた。

東急グループ「強盗慶太」こと五島慶太(左)と西武グループ「ピストル堤」こと堤康次郎(右)
箱根山戦争(五島慶太vs堤康次郎)

さて、今回の箱根探訪記のブログ記事の為、交通機関等の整理してみて今まで知らなかった興味深い事実を初めて知ることになる。それは世に云う”箱根山戦争”と呼ばれるもので、昭和30年代から小田急グループ及びその黒幕である五島慶太の東急グループと堤康次郎率いる西武グループは、国内有数の観光地である箱根山の観光開発における主導権争いを繰り広げ、観光バス、タクシー、ホテル、ゴルフ場、鉄道における観光戦略において箱根を訪れる観光客を確保するべく血みどろの闘いの史実である。巨大グループ同士の衝突が熾烈を極めたため、これに舞台となった箱根山の名を冠して「戦争」と呼ばれ、「箱根山サルカニ合戦」とも揶揄され、作家獅子文六により「箱根山」の題で小説化されており、後に川島雄三によって東宝で映画化された。

『箱根山』(獅子文六 著)原作本(左)と『箱根山』(1962年 東宝作品)映画ポスター(右)
箱根山(獅子文六 著)原作本と映画ポスター

近年では、2003年(平成15年)小田急グループと西武グループの箱根観光振興のための業務提携が発表され、年々落ち込む箱根の観光客数を盛り返したいという両社の意向が重なった形で、地元を中心に大きな驚きをもって伝えられた。

これにより小田急発行の「箱根フリーパス」が西武沿線でも発売されることとなり、伊豆箱根鉄道の駒ヶ岳索道線(駒ヶ岳ロープウェー)も乗車の都度に割引運賃を支払う形にはなるものの、利用可能になった。また、小田急箱根高速バスも西武の娯楽施設・箱根園(箱根プリンスホテル)まで乗り入れるようになり、箱根登山バスと伊豆箱根鉄道バスで同位置でありながらこれまで異なっていた停留所名を見直すなどの動きも出てきた。

2009年(平成21年)小田急電鉄と箱根登山鉄道は、西武鉄道とレールなどの鉄道資材の共同購入をスルッとKANSAI協議会と連携し共同で始めたり、2010年(平成22年)箱根町、小田急電鉄と各バス事業者間にて、箱根近辺のバス路線で共通の系統記号の使用を始めたりなどの前向きな提携が推進されている。

現在では「箱根フリーパス」は伊豆箱根鉄道のバスや芦ノ湖遊覧船・十国鋼索線(十国峠ケーブルカー)を利用できず、伊豆箱根発行の「箱根旅助け」「箱根フリークーポン」も箱根登山鉄道・箱根登山バス・箱根観光船などといった小田急系の交通機関は利用出来ないといったまだ不完全な提携状態だが、今後の方向性として共通のフリーパス発行などが両者から謳われている。

芦ノ湖畔と富士山
芦ノ湖のレトロな絵葉書

箱根山を巡る過去の熾烈な観光競争は、あらゆる策を講じてシェア奪取に注力した結果、自動車最優先の交通環境に変化させ、結果として日帰り可能な観光地に変化し、観光業者として自らの首を絞めることとなった。本来、箱根山一帯は歴史的に観光資源に恵まれ、歌川広重の『東海道五十三次』や葛飾北斎の『富嶽三十六景』などの浮世絵からも当時から旅人に親しまれた場所であったことが覗える。歴史的に温泉地として有名であった箱根は、明治維新以後、高級リゾート地としての側面も持つようになる。著名な『富士屋ホテル本館』などはその頃の面影を重視し今に伝えている。

箱根鳥瞰図
箱根鳥瞰図

今回の箱根探訪を鳥瞰図で確認してみれば、箱根山の外輪山の内側を一周するコースを辿ったことになる。観光地としての箱根の魅力や過去の観光開発による現在への影響など、様々な側面をあらためて見聞できたことを感じる。願わくば未来の箱根山は、短期的見地や企業間競争都合での開発などではなく、本来からこの場所に備わっている非日常を満喫できる魅力の観光地として君臨し続けることを願って已まない。
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Comments
ブログ拝見 
”箱根シリーズ”堪能しました、特に”緑のススキ!!”

何時も見ているのですが、まとまると美しいですね ♪。
 
Re: ブログ拝見 
KIMさん、毎度です。

緑のススキ、実は相当お気に入りなんです。

初めて訪れたので、この景観には圧倒されました。

3D写真の臨場感にも満足してます。

富士山の姿は見えませんでしたが、実に楽しい旅行でした。
 
 
こんばんは~

箱根、いいですよね。

芦ノ湖に向かって打ちっぱなしする、
ゴルフ練習場などもあり、
楽しい場所です。

東急と西武の戦争、
バブルの象徴ですが、
個人的には悪くなかったと思います。

その分、国内は色々盛り上がっていましたので。

 
Re: タイトルなし 
flowerhさん、毎度です。

箱根はさすがに観光地としての”王道”と感じました。

子供からご年配の方まで、各々楽しめる要素が満載です。

箱根山戦争に関しては、過熱する開発競争に対する
批判的な表現が多いことは否めませんが、
観光開発業として、教科書的な伝わり方もあるようです。

実際には、小田急グループが完全に優勢であることを
現地で痛感できました。
 


 
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Author:MOTO
広島県出身、東京⇔大阪間の転勤を繰り返し、現在大阪在住。広島カープ・球場模型・艦船模型が好きなオッサンだが、アクアテラリウムの名人に出会ってから魅力にはまった。以前から興味のあった3Dカメラを購入し、立体的に(あくまで私的に)アクアテラリウムへのチャレンジを記録に残していくのであった。


 
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