3Dアクアテラリウム

立体写真による探訪記と恐竜ジオラマのアクアテラリウムと駄文のブログ

 

レジェンド オブ ”江夏の21球”

Edit Category 野球
先日、『NHK アーカイブス』というテレビ番組で野球解説者の野村克也氏のリクエストによる1983年制作の『江夏の21球』が放映されていた。広島ファンとしては広島初優勝に匹敵する教科書的な奇跡の歴史を久しぶりに堪能した。野村克也氏曰く「これこそ野球のすべて」というプログラムは、30年強経過しても決して色褪せず、結果を熟知していながらも今尚惹きつけて已まない。そのドラマチックな展開を今回あらためて自分なりに整理し、この屈指の名場面をブログ内で記録してみることにした。

江夏の21球

球界を揺るがした江川問題で幕を開けた1979年のプロ野球は、広島VS近鉄というともに初の日本一を賭けた組み合わせで日本シリーズが争われた。広島、近鉄ともにフランチャイズ球場で勝利をあげ、3勝3敗で最終戦までもつれ込んだ。
この試合の9回裏、無死満塁という絶体絶命の状況で、広島の抑えの切り札として登板した江夏豊の投球内容は、今でも傑出した名場面として語り継がれている。

この日本シリーズで江夏は第2戦、第3戦に登板している。初戦敗退直後の第2戦は6回まで完璧な投球だった広島の山根和夫が7回に小川亨に初安打を許し、続くチャーリー・マニュエルに対し0-2カウントのところでリリーフしたが、7度目の日本一挑戦となる近鉄の西本幸雄監督の采配により、代走 藤瀬史郎で揺さぶられ、マニュエルに中前安打、クリス・アーノルドに犠打、羽田耕一に適時打を打たれ2失点。さらに有田修三にとどめの2点本塁打浴び炎上した。試合後、江夏は「この借りは必ず返させてもらう。」とコメントし、第3戦7回裏広島逆転後に1点差で池谷公二郎をリリーフし、広島球団の日本シリーズ初勝利に貢献すると同時に二日前の雪辱を果たしている。

最終決戦日の11月4日、大阪球場。広島は一回に1点、三回にも1点、6回には水沼四郎の2点本塁打でつごう4点。一方の近鉄は5回に平野光泰の2点本塁打、羽田の内野ゴロの間に1点入れて3点。その後両チームとも追加点を挙げることなく、得点は4対3。江夏は7回から登板し、広島1点リードで迎えた9回裏の攻防を残すのみとなり、広島はシーズン中と同様の勝ちパターンで最後のクライマックスを迎えようとしていた。曇り空はやがて小雨を降らし、3時過ぎには照明塔に明かりが点っていた。
江夏の21球?
※写真上部左側より
・前述:「野球に携わって以来、これほどの名場面に出くわしていない。今後も出くわせるかどうか。」(野村克也)
・オープニングタイトル『スポーツドキュメント 江夏の21球』※1983年NHK制作
・1979年 日本シリーズ 第7戦 小雨が煙る大阪球場。得点は4対3。広島1点リードで迎えた9回裏。
・近鉄の先頭打者は6番 サード 羽田。
※写真中部左側より
・羽田、江夏の初球をいきなりセンター前ヒット。
・近鉄、先頭打者出塁。ノーアウトランナー一塁。
・西本監督、次の7番打者のアーノルドに何やら指示。
・広島内野陣警戒。送りバントか?エンドランか?或いは単独スチールか?
※写真下部左側より
・近鉄は羽田に代わって温存していた”代走の切り札”俊足の藤瀬。
・打者アーノルド1-2からの4球目、藤瀬がスタート。水沼すかさず二塁に送球。
・二塁手前でワンバウンドし、センターへ抜ける。「アウトに出来ずともせめて前でとめなくては・・・。」(高橋慶彦)
・センターへ抜けるボールを見ながら藤瀬は三塁に向かう。

江夏の21球?
※写真上部左側より
・藤瀬三塁に達する。近鉄、ノーアウト三塁、同点のチャンス。
・思わぬチャンスに湧く、近鉄ベンチ。
・「藤瀬は当然単独スチールだと思いました。」(古葉竹識監督)
・「この場面で単独スチールはあまりにも無謀。アーノルドがエンドランのサインを見落としたことが結果オーライとなった。」(西本監督)
※写真中部左側より
・「キャッチャーの暴投は仕方ない。相手が動いてきたことを見抜けなかったことが自分のミス。」(江夏)
・「あ~あ、こりぁ1点取られるわ、と思ったよ。」(江夏)
・アーノルドに対して1-3から外野フライを警戒し低目にボール。フォアボールでノーアウト一塁・三塁。
・西本監督、アーノルドに代えて代走 吹石徳一。
※写真下部左側より
・古葉監督、広島内野陣に前進守備を指示。
・「藤瀬は内野ゴロでも突っ込んでくる。1点も与えない守備で江夏をバッターに集中させたかった。」(古葉監督)
・バッターボックスには5回に同点ツーランを放った平野。
・平野の2球目に江夏がこの試合殆ど投げていなかった膝元へ落ちるように曲がるカーブを空振り。「この人のパターンやね。一歩間違えれば暴投にもなる怖い球やけどね。」(平野)

江夏の21球?
※写真上部左側より
・「このとき思った以上にカーブのキレがいいと感じた。以降はカーブを主体に配球を組立てた。」(江夏)
・平野1-1からの3球目に一塁代走の吹石が盗塁。水沼送球せず、ノーアウト二塁・三塁。
・古葉監督、バッテリーに対して平野への4球目以降は敬遠を指示し、満塁策を採る。
・勝負してもらえず、悔しそうに江夏を挑発する平野。
※写真中部左側より
・ノーアウト、満塁。江夏は絶体絶命のピンチを迎え憮然とした表情。
・打者平野のときに古葉監督は池谷と北別府学をブルペンに送る。シーズン中にもない異例の指示。
・「シーズン中に何度も信頼されている言葉を聞きながら、最後の最後で動くのではやりきれない。」(江夏)
・「日本シリーズは最長4時間ルール。万一延長戦で江夏に代打を送った後の準備では間に合わない。」(古葉監督)
※写真下部左側より
・チームの切り札を自負する江夏は広島ベンチの動きに憤りと孤独感と虚しさを感じていた。
・近鉄、ピッチャー山口哲治の打順で代打 佐々木恭介。前年パ・リーグの首位打者だが、腱鞘炎の為、シリーズでは控えに回っていた。
・西本監督は佐々木の打撃に勝負を託したが、広島ベンチを翻弄する為、奇襲を偽装するブロックサインを送る。
・「思った以上に冷静だった。江夏さんの投球パターンを頭の中で整理する余裕があり、何か打てそうな予感があった。」(佐々木)

江夏の21球?
※写真上部左側より
・佐々木の初球の見逃し方より、江夏はカーブを狙っていると判断。2球目に変哲のない打ち頃のコースのストレートを見逃す。
・3球目、内角高目のカーブを打ち三塁線沿いに大きく跳ねた。
・三塁手 三村敏之のジャンプした頭上を越え、三塁線を僅かに外れファール。「背が高くなくてよかった。」(三村)
 ⇒後年、三村のグラブの先がボールに微かに触れたことを供述。サードコーチの仰木彬は抗議していない。
・抜けたと思い、思わず西本監督が飛び出す。
※写真中部左側より
・ファールの直後、一塁手の衣笠祥雄がマウンドに歩み寄り、江夏に声を掛ける。
・「ベンチやブルペンを気にするな。オマエはオマエらしくバッターに集中して勝負せえ。」(衣笠)
・「苛立ってカッとなっているのがコイツには判るんやね。この言葉にどれだけ救われたか。」(江夏)
・「とにかくこの場面で江夏が中途半端に投げて、実力を出せないまま負けることが許せなかった。」(衣笠)
※写真下部左側より
・冷静になろうとする江夏。
・佐々木への5球目、内角低目へボールになる見せ球のストレート。「これで佐々木は次の配球が読めなくなった。」(野村克也氏)
・佐々木への6球目、5球目と略同じコースから膝元へ落ちていくカーブを腰砕けのような体勢で空振り三振。ワンアウト。
・打ち取られて茫然としながらダグアウトに戻る佐々木。

江夏の21球?
※写真上部左側より
・「自身の野球人生において、この打席の2球目を見逃したことが最大の後悔。もう一回この場面をやりたい。」(佐々木)
・ワンアウト満塁。次の打者 石渡茂に話し掛ける西本監督。「ストライクは積極的に打て。但しスクイズもあり得るのでサインをよく見ろ。」
・スクイズを警戒し、ランナーの動きを凝視するよう広島ベンチ内で確認。
・ワンアウト満塁での守備隊形を確認する広島ナイン。
※写真中部左側より
・「ストライクをすべて振る気概が無ければ江夏は打ち崩せない、と石渡にハッパを掛けた。」(西本監督)
・石渡への初球、外角から入ってくるカーブを打ち気のない待ち方で見送り。ストライクのコール。
・西本監督、石渡の消極姿勢を見て、審判のコールと同時にスクイズのサインを出す。「あっ出たな。」(石渡)
・石渡への2球目、江夏は次の球にカーブを選び投球モーションに入る。
※写真下部左側より
・江夏のリリース直前に水沼が動く。同時に石渡がバットを下げ、江夏はバントの構えを感知しながらボールをリリースした。
・暴投にも見えるこの1球が、9回裏、この場面のすべてを決めることになった。
・江夏はカーブの握りのまま外しにかかり、曲がり落ちて石渡の差し出したバットの下を潜り、水沼のミットにボールが吸い込まれた。
・スクイズは外された。

江夏の21球?
※写真上部左側より
・スタートを切っていた藤瀬は、もう水沼の数メートル前まで迫っていた。踵を返して三塁に戻ろうとする藤瀬の背中に水沼がタッチした。ツーアウト。
・「外されたとは今でも思ってません。カーブの握りのまま外せるものですか?」(石渡)
・「普通のピッチャーならカーブの握りのままで外せんですよ。」(水沼)
・「今思えば、自分が如何に冷静だったかということだね。自分で言うのもナンだけど”神業”に近いと思う。」(江夏)
※写真中部左側より
・ツーアウト、二塁、三塁。石渡のカウントは2-0。まだピンチに変わりないが、流れは完全に広島、いや江夏に移っていた。
・ベンチでガックリ項垂れる西本監督。
・自信満々で水沼のサインに頷く江夏。
・石渡、ファールの後の4球目、佐々木のときと略同じコースのカーブで空振り三振。ゲームセット。
※写真下部左側より
・「江夏、ガッツポーズ!」(実況)
・「広島、初の日本一!!」(実況)
・「江夏、飛び上がる!!!」(実況)
・後述:「果たして偶然なのか神業なのか?スクイズを外した1球は、江夏の野球の過程が生んだ奇跡の1球と言える。」(野村克也氏)

南海時代の江夏と野村のバッテリー
南海 江夏野村

あまりにも有名な『江夏の21球』だが、このVTR視聴後に野村克也氏は、江夏のようにプライドが高く、扱いにくいピッチャーの心理を鑑みれば、ブルペンに他のピッチャーを送った古葉監督の真似は絶対にやらないとコメントしていた。後年、古葉もこの件については江夏レベルのピッチャーならそう思うのも当然だと言っているものの、ブルペンの件で江夏を奮い立たせる意図などなく、当時も今も監督として冷静に判断し、方策は誤ってなかったという自負があるという。

一方の江夏は、翌1980年の開幕戦の日に監督室を訪ね、「どうしてもあのときのブルペンの件は納得できない。」と言い、古葉は困惑しながらも30~40分話し合い、監督としての自分の立場や考え方を説明しながらも「悪かった。水に流して今年また1年頑張ろう。」と江夏に詫びた。江夏はロッカーに戻り、衣笠に「今、言ってきたぞ。」と言えば「オマエは執念深い男だな。」と大笑いしたという。
そのあたりは、双方ともに頑固で譲らない。

あまり知られていないが、スクイズを察知して絶妙のタイミングで立ち上がった捕手の水沼四郎は江夏と同郷の尼崎で報徳高出身。江夏とは学年で二つ上になる。園田中の江夏が報徳高の練習を見学に来た際にキャッチボールの相手をしたのが水沼だった。奇縁で結ばれていた二人は宿命のように再会し、絶妙の呼吸で伝説を紡いだ。

水沼が中央大三年生の時、石渡茂は新入生の一人として合宿所で水沼の身の回りを世話していた。先輩には絶対服従の時代であり、学年が二つも違えば厳格な関係が築かれる。いくつ年を重ねても学生時代の内心は透けて見える。水沼はマスク越しに石渡に「スクイズか?」と探りを入れたが、無言を貫く石渡から極度の緊張を感じてスクイズを確信したという。

'79日本シリーズ古葉監督の胴上げ
広島東洋カープ ’79V

『江夏の21球』のストーリーを通して私なりの推測がある。
江夏は三塁に走者が出て満塁となって絶体絶命のピンチを招いたときには、一度は”諦めに近い開き直り”だった筈だ。ところがリリーフがブルペンに行くのを見て、広島ベンチに対する激しい憤りが湧きあがった。そのことがおそらく弱気で受け身であった江夏の心に火を点けることになった。その直後に衣笠の言葉で冷静になり、集中力をみごとに蘇らせることが出来たのである。

江夏の心理状態において”諦めに近い開き直り”は、イニングにおける様々な経過の中で”前向きな闘争心”に変貌したのであろう。対佐々木における江夏の心の転化が”計算した三振”を成立させたことで、私の推測を裏付けているとも云える。そしてその意味で衣笠はこの場面には決して欠かすことのできない役割を担っていたことが判る。因みに江夏と衣笠は最終戦を控えた前日に気分転換の為、二人きりで京都に繰り出し、朝まで飲み明かした。大阪の宿泊ホテルに戻って数時間後に共に決戦のグラウンドで勝利と敗北の対角線上を彷徨うことになるのである。

江夏と古葉の頑固さ、江夏と衣笠の絆、江夏と水沼の絶妙の呼吸、石渡への水沼の推察 等、日本シリーズのクライマックスの攻防を巡る個々の繋がりや縁、或いは局面ごとの心理や判断がこのドラマにおいて欠かせない要素になり、各々が巧妙に絡み合うことで奇跡の歴史的瞬間が成り立ったことを痛感する。

案内役の野村克也が「野球はチーム競技でもあり、個の集合体でもある。」と冒頭に述べていたが、このドラマには「これぞ野球だ。」と云える醍醐味が凝縮されている。なるほど見るたびに新しい発見があり、奥深さを感じる。

広島球団は、球団創設30周年のこの年、30回目の日本シリーズで悲願の栄冠を手にした。野球の神様は迷いに迷った挙句、最後は広島に微笑んだ。
奇しくもこの日は近鉄応援団が陣取る一塁側にしか、なぜか小雨は降り注がなかったという。

'79日本シリーズ江夏をナインが祝福
江夏の21球b

【追記】
勝利が眼前にまで見え惜敗した近鉄は翌1980年もリーグ覇者となり、2年連続で同じ組み合わせの日本シリーズとなった。1979年同様に第7戦までもつれ込んだが、西本監督の悲願の日本一にはまたもや惜しくも手が届かなかった。
近鉄球団は西本監督時代に残された日本一という「宿題」は、結局その後も果たされる事はなかった・・・。

'79日本シリーズ終了後の西本監督と仰木ヘッドコーチ
’79日本シリーズ近鉄ベンチ

1979年のこの日、私は高校一年生で当日は学園祭の日であった。試合経過をラジオで聴いている者から、「1点差で江夏が投げよるけぇ、勝つじゃろぅ。」という状態から「9回裏、ノーアウト満塁じゃけぇ、江夏でもダメじゃろぅ。」と聞こえてくるのをイライラしながらどうすることもできなかったのを憶えている。「すげぇ~のぉ、スクイズ外したらしいどぉ。」と聞くや否や、「体育館の事務室で先生がテレビで日本シリーズ見ようるよ。」と聞こえてきたので、急いで駆け付け、辛うじて最後の石渡を三振に仕留める場面だけリアルタイムで見ることができた。

Number Video 1979広島-近鉄
Number Video 1979広島-近鉄

確かに『江夏の21球』は何度見ても結果が解かっていてもドキドキさせられるが、文芸春秋社のNumberシリーズのDVDで第1戦から第7戦までのダイジェストを見ていけば、この9回裏のドラマも更に際立って感じられると思う。

あの強かった頃のカープが本当に懐かしい。
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Author:MOTO
広島県出身、東京⇔大阪間の転勤を繰り返し、現在大阪在住。広島カープ・球場模型・艦船模型が好きなオッサンだが、アクアテラリウムの名人に出会ってから魅力にはまった。以前から興味のあった3Dカメラを購入し、立体的に(あくまで私的に)アクアテラリウムへのチャレンジを記録に残していくのであった。


 
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